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化学の始まりは台所から。
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nitizyou-rika.hatenablog.com
今回のテーマは消毒と漂白です。友人から書いてみてと提案されたので、記事にしました!なかなかハードなテーマで文字数も多いですが、内容も濃いですので、是非最後までご覧ください!
1. 消毒液ってなんで消毒できるの?
新型コロナウィルスの流行で、最近はより一層消毒に気を使っているという方も多いのではないでしょうか?未だに消毒液が手に入りにくい状況が続いてますよね。
でも皆さん、何でアルコールで消毒できるか知ってますか?「それは菌が死滅するからでしょ?」と正解がわかっている方もいるでしょう。では、何で菌は死滅するのでしょうか? ここまで来ると、答えられる方はかなり少ないのではないかと思います。ですので、今回はその辺りを踏まえて除菌の仕組み等について詳しく解説していきます!
1-1. アルコールで消毒ができる理由
皆さん、アルコール消毒液の成分はご存知でしょうか? 我が家にある2種類のアルコール消毒液の成分を下に示します。
有効成分として、エタノールが共に含まれています。エタノールとは別名エチルアルコールとも呼ばれ、消毒液以外で身近なところですと、主に飲用のお酒などに使われています。
細胞膜膜の図:https://juken-mikata.net/how-to/biology/cell-membrane.html
アルコール(エタノール)が除菌作用を示す理由としては、エタノールの構造にヒミツがあります。上に示したエタノールの分子模型を見てください。エタノールは炭素(黒)、水素(白)、酸素(赤)によって構成れています。主に赤の部分は親水部と呼ばれ、水と馴染みやすい性質を持っています。一方で、黒の部分は疎水部と呼ばれ、油と馴染みやすい性質を持っています。
この構造は細胞膜と共通しており、エタノールが作用することで、細菌の細胞膜に穴を開け、内容物を漏出させます。加えて、細胞は栄養素の取り込みが阻害することで、飢餓状態に陥り、死滅すると考えられております。これはエタノール濃度40~70%の中低濃度での作用の仕方であり、70%以上の高濃度では細胞膜そのものが破壊、タンパク質の変性(形が大きくかわること)によって菌の死滅が起こると言われています。
1-2. 1番効果的なアルコールの濃度
「アルコールで消毒できるなら、お酒も使えるじゃん!」って思った方は鋭いです。アイデアとしては良いですが、人間が酔って気持ちよくなれる程度の濃度では菌は死にません。ではどの程度の濃度が最も効果的なのでしょうか。それはエタノール濃度70%です。なぜ70%とかと言うと、先程述べた細菌が死滅する理由の中で、細胞膜が破壊されると言いました。この破壊が最も効果的に起こる濃度がエタノール:水=1:1であり、重量比に直すとエタノール濃度70%となります。
逆にエタノール濃度を増やせば最も効果的なのではないか?と思う方もいると思いますが、実はエタノール100%では殺菌作用を示しません。ですので、水と共に用いることが重要なんですね。
1-3. エタノール以外は使えないのか?
アルコールとは、主にヒドロキシ基(OH基、酸素と水素が繋がった構造)を持つ化合物の総称です。似た構造の化合物はたくさんあります。今回はエタノールに近い構造を持つメタノールを例にお話させていただきます。
メタノールとは、エタノールが少し短くなった構造を持っています。
メタノールもエタノール同様に殺菌作用を示します。メタノールは40%以上から殺菌作用を示し、100%に置いても殺菌作用を示します! エタノールより優秀なんじゃないかと思うかもしれませんが、メタノールは人体に有害です。アルコールは体内に入ると、代謝されて排出されます。エタノールは代謝されると酢酸(お酢の元)になりますが、メタノールは代謝されるとギ酸(蟻が持つ毒)に変換され、失明や死亡に繋がります。イランでは、「メタノールを飲むとコロナウィルスを予防できる」とデマが流れ、500人以上の死者が出ています。間違っても、エタノールの代わりに使用しないように気を付けましょう。
ある教授は「菌を殺すのは簡単なんだ、人を殺さないようにするのが大変なんだ」とおっしゃっています(笑)。そういった意味で、アルコール消毒液(エタノール)は、すぐ揮発して、人体にも影響が少ない優秀な消毒液と言えるでしょう。
2. 漂白剤はなぜ漂白できるのか?
除菌や汚れ落としに使える漂白剤も、「アルコール消毒液の代わりに使えるのでは?」と注目を浴びてましたよね。今回は漂白できる原理とアルコール消毒液の代わりになるのか等について述べていこうと思います。
2-1. 漂白剤で漂白できる理由
漂白剤には、「塩素系漂白剤」、「酸素系漂白剤」、「還元系漂白剤」の3種類が存在します。塩素系漂白剤と酸素系漂白剤は酸化により汚れを分解するため、酸化系漂白剤とも呼ばれています。洗剤は界面活性剤によって汚れを落とすのに対して、漂白剤では化学反応を利用して汚れを落とします。
漂白剤は「酸化」や「還元」という化学反応を利用して、汚れを分解しています。しかし、酸化と還元って聞いたことはあるけど、イマイチよくわからないって方も多いのではないでしょうか。簡単に言い換えると、酸化は「金属→錆び」の流れであり、つまり酸素と結び付くことと理解して貰えば、今回の記事中では問題有りません。一方、還元は「錆び→金属」という流れのであり、酸素が取り除かれることと理解して貰えば同様に問題有りません。
次にそれぞれの漂白剤で用いている具体的な化学反応について述べていこうと思います。化学が苦手な方は、2-2.まで読み飛ばしちゃってください(笑)。
2-1-1. 塩素系漂白剤
塩素系漂白剤の成分は、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO, 塩素系)と水酸化ナトリウム(NaOH, アルカリ剤)です。次亜塩素酸が分解することで、酸素が発生し、酸素が汚れの成分と結合することで、汚れの色を無色に変えます。汚れを錆びさせているとも言えるでしょう。化学反応式は次の通りです。
長期間保管していると自然に分解し、食塩水へと変化するため、薄めて使う際には注意が必要です。上の化学反応式では、空気中の二酸化炭素が水に混ざると生成する炭酸(H2CO3)が反応の起点となっています。要するに、ある程度のつけ置きが必要なのは、次亜塩素酸ナトリウムの分解を進行させるためなんですね。
また、酸性洗剤などと混ぜると塩素が発生し、人体に有害ですので注意が必要です。酸性洗剤でなくとも、掃除用にクエン酸を使っていたりする際には、気をつけましょう。混ぜるな危険です。
塩素系漂白剤を使っていて、手が荒れた経験はありませんか? 次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性では安定して存在できるため、塩素系漂白剤には水酸化ナトリウムが添加されています。アルカリには皮膚のタンパク質を溶かす作用があるため、素手で触ると手が荒れるわけです。仮に、漂白剤を直接触った場合は、流水で十分に流しましょう。あと、手がヌルヌルするのは、あなたの手が溶けている証拠です(笑)。
2-1-2. 酸素系漂白剤
酸素系漂白剤に含まれる成分は、過酸化水素(H2O2, 酸素系)と界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)です。こちらも塩素系同様に、過酸化水素が分解することで、発生する酸素を利用して汚れの色を落とします。塩素系に比べ漂白力は弱いですが、衣類を傷めにくいという特徴もあります。化学反応式は次式の通りです。
塩素系と異なり、酸性洗剤と混ぜても、有毒なガスは発生しません。しかし、漂白作用は落ちることが予想されますので、併用は避けたほうが良いでしょう。
過酸化水素は漂白剤以外にも、紙の色を抜くブリーチ剤にも使用されています。ブリーチ剤にはアンモニアなどのアルカリ剤と過酸化水素が入っており、アルカリ剤によって外側のキューティクルを開き、過酸化水素によって脱色を行います。余談になりますが、もしかしてブリーチ剤が臭かったのって、アンモニアが含まれているからだったのでしょうか!? 個人的には新発見です(笑)。
2-2-3. 還元系漂白剤
還元系漂白剤に含まれている成分は、還元剤(二酸化チオ尿素, ハイドロサルファイトナトリウムなど)、炭酸塩(アルカリ剤)、金属封鎖剤(キレート剤)です。実は私も、今回初めて存在を知りました。還元系漂白剤は、金属の錆び由来の汚れを落とす目的で使用されます。まさかの還元そのまんまでしたね(笑)。ハイドロサルファイトナトリウムの例で化学反応式を示します。
還元系漂白剤は還元剤ですので、水素を与えるはたらきをします。
私は商品を見たことすらなかったので、今度スーパーで探してみたいと思います(笑)。
2-2. アルコール消毒液の代わりに使えるのか?
新型コロナウィルスの流行に際して、アルコール消毒液が品切れになっているときにこの話題があがったことを覚えています。ここでは塩素系漂白剤を例に話を進めたいと思います。
結論から述べますと、 塩素系漂白剤は低濃度であれば消毒液に利用できます。次亜塩素酸ナトリウムの殺菌作用は非常に強力で、ごく低濃度でも速効性のある殺菌作用を示します。HIVや結核菌などのウィルスに対して、最も信頼される消毒液とのことです。しかし、その効果は強力であり、高濃度での使用は肌荒れ、噴霧しての使用は吸い込むとむせたりなどの皮膚の炎症などの症状が出ますので避けましょう。詳しくは花王のホームページを参照ください。
まとめ
1-1. アルコールで消毒できる理由
→ 細胞膜を破壊、タンパク質の変性を引き起こすから
1-2. 一番効果的なアルコールの濃度
→ エタノール70%
1-3. エタノール以外のアルコールは使えないのか?
→ 人体に有害な場合があるので使えない
2-1. 漂白剤で漂白できる理由
→ 酸化および還元反応で汚れを分解するから
2-2. 消毒液に使えるのか?
→ 低濃度で使用方法を守れば使える
今回の記事はいかがでしたかでしょうか? 初めて化学らしいテーマを取り扱うことができて嬉しいです。しかし、文字数が膨れてしまったのは痛いです。実際、今書いている実験レポートより多くなっています(笑)。ネタも随時募集していますので、コメントまたはツイッターの方にご連絡ください! 最後までをご覧いただきありがとうございました。
キッチン
Twitter:https://twitter.com/kitchen_sato_
出典:
アルコール消毒液
細胞膜の構造と働きを徹底解説!受動輸送・能動輸送をマスターしよう|高校生向け受験応援メディア「受験のミカタ」
https://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/08/08_05.pdf
(2012年6月発行)食品工場の微生物制御へのアルコールの利用技術
漂白剤
漂白剤の種類と漂白作用
花王株式会社 | ハイター
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